仲野清五郎、仲野孫六、仲野清次郎

吟醸酒を世に知らしめた酒蔵、出羽桜酒造株式会社。

地元を大切にしながら、誰が飲んでも違いに気づくような良質の酒造りを行っています。

出羽桜酒造株式会社

出羽桜酒造株式会社出羽桜酒造株式会社は、将棋の駒の産地としてよく知られている山形県天童市で、明治25(1892)年に創業しました。

蔵元である仲野家の祖先は近江商人であり、行商の小商人が土着して飴屋を営んだといいます。

質素勤倹を家訓とする商いが功を奏し、何代か後にはこの地方切っての地主となりました。

その後一族からは多くの分家が生まれ、造り酒屋や醤油屋など様々な商売を行っていくことになります。

安政二年には、出羽桜酒造創業者・仲野清次郎の父・仲野清五郎が本家より分家し、造り酒屋を始めました。

この際の銘柄が熊正宗であり、出羽桜のルーツとも言えます。

仲野一族の分家には、管内に仲野清五郎の「熊正宗醸造元」、仲野孫六の「白菊醸造元」、仲野清次郎の「白梅醸造元」という3軒の造り酒屋があり、近くの井戸には、水運びの蔵人が列をなして並んだそうです。

しかし、昭和18年の企業整備では、一番新しい分家かつ、醸造数量三百石と最小規模であった出羽桜酒造(旧白梅醸造元)のみが天童市で唯一存続することを許されました。

初代・仲野清次郎

初代・仲野清次郎は、今はなき熊正宗醸造元・仲野清五郎の次男として安政五年に誕生しました。

醤油屋になれとの親の勧めで、一度は醬油製造を始めました。

しかし、流れる近江商人の血が、親・兄弟との競合の道を選ばせたのか、明治26年に独立して白梅醸造元として酒造業を興しました。

初代は、酒造りを発酵学として理論的に学ばせる「王道の酒造り」をスタートします。

初代杜氏・富樫堅吾を醸造試験場で学ばせ、二代目清次郎には醸造試験場に加えて、灘の大関酒造で研修をさせるなど、蔵人の育成に力を注ぎました。

こうして創世記であるこの時期から出羽桜の「品質志向」は根付いていったのです。

出羽桜の由来

出羽桜創業当初は、白梅を主に製造しており、出羽桜は一部の高級酒のみに使われていた銘柄名でした。

白は米を表し、梅は縁起物であることから、白梅という銘柄は全国に複数存在しました。

地元で商売をしている間は問題がなかったのですが、天童市外、山形県外に販路を求めていくにつれ、他社との差別化を図るために、出羽桜に一本化していくこととなります。

出羽桜の名の由来は、出羽国の「出羽」と、桜の名所として知られる舞鶴山の「桜」からきています。

奈良時代より、山形県と秋田県(東北部除く)は出羽国と呼ばれており、日本の地方行政区分だった令制国の一つでした。

明治元年十二月、戊辰戦争に敗けた奥羽越列藩同盟諸藩に対する処分が行われ、出羽国は、現在の山形県に相当する羽前国と、秋田県に相当する羽後国に二分割されました。

その結果出羽国はなくなりましたが、出羽という名は出羽三山を代表するように各地に残りました。

当時、初代清次郎は十歳と幼い頃でしたが、出羽国に対する思い入れは強く、その思いが出羽桜の命名に大きな影響を与えました。

またその名には、地元の皆様に愛される酒でありたいという思いも込められています。

吟醸酒を世に知らしめた出羽桜

出羽桜酒造では、昭和55年に吟醸酒を発売しました。

当時吟醸酒は、品評会のために作られるお酒であり、一般人には知られていない名称で、わずかに市販されていた吟醸酒も、主に贈答用に購入される「特殊で高価なお酒」としての扱いをされていました。

それまでも長年吟醸酒を造り続けていた出羽桜酒造。

「高品質で香り華やかな吟醸酒を一人でも多くの人に飲んでもらいたい」との思いから、吟醸酒を他に先駆けて一般向けに販売し、吟醸酒を世に知らしめた酒蔵として知られるようになりました。

現在も地元の蔵人による完全手造りにこだわり、人の手のぬくもりや感覚を大切にした品質第一の酒造りにいそしんでいます。

造る酒は香り高くさわやかで、飲み口がなめらか、ふくよかな旨みがあるのが特徴。

委託精米が主流の中、出羽桜は自社の精米場で丁寧に米を磨きます。

玄米の重量に対して、白米として残った割合を精米歩合といい、出羽桜は平均で50%まで磨きます。

地元の人に喜ばれることと、酒のプロだけでなく日本酒をはじめて飲む人が飲んでも味の違いに気付くような良質の酒造りをポリシーとしています。

長年の功績が認められ、平成元年度に山形産業賞を酒造業では唯一受賞しています。

出羽桜酒造株式会社
山形県天童市一日町1-4-6

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出羽桜美術館

出羽桜美術館は、1988年に、三代目仲野清次郎が永年に亘って蒐集してきた陶磁器、工芸品等の寄贈を受けて開館したプライベート美術館です。

三代目清次郎の旧住宅である明治後期頃の伝統的日本家屋の建物を活用し、木造瓦葺の母屋と蔵座敷を展示室として公開しています。

建物は登録有形文化財に指定されています。

主な収蔵品は、酒器を中心に、古韓国・新羅・高麗・李朝期の陶磁器と工芸品が展示されています。

特に、李朝の磁器コレクションが充実していて見ごたえがあります。

その他、斎藤真一「瞽女・明治吉原細見記」、近代文人の書、桜に因んだ工芸品、日本六古窯等、三ヶ月毎の企画展示をしています。

住所: 〒994-0044 山形県天童市一日町1-4-1
電話番号: 023-654-5050
入館料: 一般500円、高大生300円、小中生200円

開館時間: 9:30~17:00[入館は16:30まで]
休館日: 月曜日[祝祭日の場合は翌日]、年末年始、展示替え期間
※詳細はスケジュールを御覧ください。

交通:
JR天童駅より徒歩15分
JR山寺駅より車で15分
山形空港より車で15分
山形交通バス北目口下車すぐ
※美術館向かいに無料駐車場をご用意しております。

おすすめの日本酒

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一推しの「出羽桜 一路」は優雅な香りと米の甘味が生きた一本。

旨みとキレの良さが両立した軽やかな口当たりで、口に入れてからが旨い酒です。

バランスの良さと醸造技術の高さが感じられるような綺麗に整った酒ですので、日本酒初心者の方にもぜひ一度お試ししていただきたいものです。

また、イギリスの世界最大級の酒類品評会IWC2008のSAKE部門で、最高賞である「チャンピオン・サケ」を受賞。

イギリス最古であり、英国王室御用達のワイン商であるBB&R社が初めて取り扱う日本酒にも選ばれました。

銘柄: 出羽桜 一路
特定名称: 純米大吟醸酒
使用米: 山田錦
精米歩合: 45パーセント
日本酒度: +4
酸度: 1.3
アルコール度数: 15度

香り  弱・・・・★強
コク  薄・・・★・濃
キレ  弱・・★・・強
味わい 甘口・・★・・辛口

美味しい飲み方

ステーキ酒の温度が低すぎると若干苦みを感じることもあります。

やや冷たい温度から室温程度がおすすめです。

生は少し冷やし気味で、ワイングラスで飲むと香りが引き立ちます。

地元の山形牛のステーキと一緒に飲めば格別。

肉の脂っこい部分だけを流し、口をすっきりさせてくれます。

その他おすすめの酒

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出羽桜 出羽燦々 誕生記念(純米吟醸酒)

酒米、麹、酵母などすべて山形産にこだわった一本。

穏やかで上品な酸味と、柔らかく幅のある味わいが魅力です。

冷やで飲むと実にフルーティで、フレッシュ感のある酸が立ち、ふっくらとした米の旨みが口に広がります。

酸と旨みのバランスが非常によく、柔らかな甘みがあり、キレが良いお酒です。

ぬる燗では、じわっと出てくる旨みに酸が絡む柔らかい飲み口となります。

出羽桜【でわざくら】~英国でも認められた吟醸酒の先駆け的存在~ まとめ

吟醸酒の市販にいち早く取り組み、たくさんの人に吟醸酒をすばらしさを伝え続けている出羽桜。

山形のロマンが詰まった出羽桜を、ぜひ堪能してください。

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