日本酒のラベルに、「三段仕込み」とか「四段仕込み」などと表記されていることがあります。
これらの表記の意味するところはどういうことなのでしょうか。
基本的に日本酒は、酒米と水を混ぜ合わせて発酵させ「醪」(もろみ)にしたものを搾ることによって造られています。
仕込みとはこの醪を造る段階のことを言いますが、この時に醪の元となる酒母へ麹と蒸米を何回かに分けて加えていくことから「段仕込み」と呼ばれるようになりました。
三段仕込み
三回に分けて仕込めば「三段仕込み」、四回なら「四段仕込み」といいます。
一気にすべての量を仕込むのではなく、こうして分けて仕込むことで、酒母の酸度を適正にコントロールし、雑菌の繁殖を抑えることができるという伝統的な手法で、室町時代の文献である「御酒之日記」にもこの手法についての記述を見い出すことができます。
この段仕込みの手法により、酵母の活性が失われずに醗酵が進み、醪造りの最終段階では20%を優に超えるアルコール分が造り出されます。
この高いアルコール度数を蒸留せず醸造によって成し遂げていることが、他のお酒にはない日本酒だけの特徴です。
この手法は、まさに世界に誇る技術的な遺産ともいえるものです。
この仕込みの工程は三回に分けて行なわれることが多く、ほとんどが「三段仕込み」により造られています。
それぞれの段階には呼び名があり、順に初添(はつぞえ)、仲添(なかぞえ)、留添(とめぞえ)と呼ばれています。
初添 (はつぞえ)
醪造りの一番最初の仕込み工程を初添といいます。
この段階では、仕込みタンクに酒母を移し、そこへ少量の麹と米を加えて仕込みます。
ここで加えられる米と麹はそれぞれ掛米、掛麹と呼ばれています。
この状態で発酵を進め、酵母の数をどんどん増やしていきます。
仲添 (なかぞえ)
醪造りの二回目の仕込みは仲添といいます。
初添から仲添の間にはただじっと様子を見るだけの期間が存在します。
この期間は「踊り」とも呼ばれ、酵母に急激な環境の変化を与え過ぎないために取られる時間です。
その後、仲添の工程に移りますが、この工程では初添の際に加えた量の2倍の米と麹を仕込みタンクに加えます。
そうしてさらに発酵を進めていきます。
留添 (とめぞえ)
醪造りの最後の仕込みを留添といいます。
この工程では仲添の際に加えた量のさらに2倍の麹と米、それに仕込み水を加えます。
この段階まで来ると、醪の発酵もかなり進んでおり、最初の20倍から25倍ほどの容積になっています。
この後、温度が上がり過ぎてしまわないように仕込みタンクの温度調節を細かく行ないながら、発酵をコントロールしていきます。
だいたい3週間から4週間ほどで醪の完成となり、絞りの工程へと進んでゆくことになります。
「四段仕込み」や「十段仕込み」の意味
このように、醪を仕込む段仕込みの工程は三回行なうのが日本酒造りの基本的な手法です。
しかしながら時折、「四段仕込み」や「十段仕込み」などさらに仕込みの回数を増やして造られているお酒もあります。
このようなお酒の場合、仕込みの回数を増やす目的は発酵の促進ではなく日本酒度の調整にあることが多いようです。
例えば甘口の日本酒を造りたい場合などです。
このようにして目的の酒質を得ようとしているということです。
ですから、単純に仕込みの段数が多いほど手間暇をかけた良いお酒であるということではありません。
段仕込みの意味~醪を造る大切な工程~四段仕込みや十段仕込みも まとめ
このような背景を理解していると、美味しい日本酒を見つける助けになるかもしれません。
いずれにしても、この「段仕込み」こそが日本が誇る醸造技術の中心であることは間違いありません。