
ひとくちに日本酒といっても、その造り方にはいろいろな手法があります。
原料による違いも大きいものですが、造り方の違いによっても日本酒の味や風味は異なってきます。
違いを生み出すひとつの要素に、仕込む季節があります。
代表的なものをふたつ挙げてみましょう。
ひやおろし
「ひやおろし」とは、寒さが厳しくなる真冬に仕込みを行ない、春先に搾られるお酒のことを言います。
しかし出荷されるのは春ではなく、秋です。
搾られたお酒はじっくりと寝かして熟成させ、外の温度と蔵に貯蔵されているお酒との温度がほぼ同じになる秋になってから出荷されます。
このようにすることで、できたてのお酒の独特の荒さが取れ、口当たりが滑らかでまろやかなお酒に仕上がります。
したがって、「ひやおろし」の旬は秋ということになります。
いろいろな食べ物が美味しくなる秋にぴったりのお酒であることから、江戸時代から親しまれているお酒でもあります。
ぜひ美味しい料理と共にお召し上がりください。
寒造り
「寒造り」(かんづくり)は「寒仕込み」とも呼ばれ、最も酒造りに適しているといわれている11月から2月ごろの寒い季節に酒造りをすることを指します。
冬の寒さの厳しい時期には雑菌が繁殖しにくく、酒造りが非常にうまくいくため、江戸時代から盛んに行なわれている造り方で、当時はこの「寒造り」をしたお酒は「寒酒」と呼ばれ親しまれていたようです。
したがって、「寒造り」をしたお酒の旬は春ということになります。
この時期の新酒は鮮烈でフレッシュな味を充分に楽しむことができます。
時間の経過と共に熟成が進み味も変化してゆきますが、旬の良さを味わいたいのであればぜひ春の新酒をお楽しみください。
四季醸造の発達により旬を感じなくなった日本酒
最近では技術の進歩により、酒蔵の温度を機械設備によって微調整できるようになったため、大手の酒造メーカーでは「四季醸造」を行なっているところが多くなっています。
「四季醸造」とはその名の通り、一年を通してお酒を造ることを指します。
春夏秋冬いつでも同じお酒を同じ味で飲むことを可能にした技術ですが、その反面、日本酒の旬というものが無くなりつつあるようです。
仕込む季節によるお酒の違い~日本酒の旬!ひやおろしと寒造り~まとめ
それでも「ひやおろし」や「寒造り」あるいは「寒仕込み」などと謳っているお酒は、旬の日本酒を楽しむ機会を与えてくれます。
お酒が一番美味しい時に、季節の美味しい肴で旬を実感してみるのはいかがでしょうか。