月桂冠~日本酒に科学技術をいち早く取り入れた大倉恒吉と鹿又親技官~月桂冠株式会社-大倉記念館

月桂冠株式会社は非常に歴史のある蔵元でありながらも、日本酒造りに積極的に科学技術を導入して近代化を進めた酒造メーカーです。

常に挑戦を続ける革新的な取り組みにより、多くの新たな日本酒を生み出しています。

月桂冠株式会社

gekkei_img01創業は寛永14年(1637年)と非常に古く、他の業界と比べて老舗の多い日本酒業界の中でも、月桂冠の歴史は群を抜いています。

初代の大倉治右衛門が城下町として、さらには宿場や港のある町として賑わっていた京都伏見において酒造りを始めています。

1867年に起きた有名な鳥羽・伏見の戦いでは、酒蔵が被害を受けたものの本宅は被害を免れ、廃業せずに済んだという記録があります。

logo1905年には「月桂冠」という銘柄の使用を始めます。

月桂冠は、古代ギリシャ時代から用いられている勝利と栄光のシンボルで、主として月桂樹の葉を環状にしたものがロゴとして用いられました。

最近は、月桂樹の葉を近代的に改良したロゴが使用されることもあります。

1970年代には「お酒の王様・月桂冠」、1980年代には「日本の酒・月桂冠」などというキャッチコピーが用いられ、誰でも知っている酒造メーカーになっていました。

大蔵省醸造試験所設立

yjimage月桂冠というメーカーの最大の特徴的な出来事として、1910年(明治42年)に大倉酒造研究所を設立したことが挙げられます。

明治に入ると、日本酒の醸造法は科学的に解析され始めます。

当時の酒造りは、途中で腐らせてしまったり(腐造)、貯蔵中に腐敗(火落ち)させてしまうこともしばしばありました。

このため、事業が立ち行かずに倒産してしまう酒造メーカーが後を絶ちませんでした。

加えて、当時は酒税が国庫収入のなんと3分の1を占めていたため、お酒の腐敗は国にとっても無視のできない問題でした。

政府はついに明治37年(1904年)に国立の大蔵省醸造試験所(現在の独立行政法人酒類総合研究所)を設立することになります。

その目的とするところは、清酒の醸造を安全に行ない腐敗させないようにすることと、清酒の最適な貯蔵法を研究して確立することにありました。

大倉恒吉と鹿又親技官そして濱崎秀

その後、全国の酒蔵で醸造の実態調査が行われますが、月桂冠にも1907年(明治40年)に醸造試験所から鹿又親【かのまたちかし】という名の技官が派遣されることになります。

鹿又技官は酒蔵に宿泊し、醸造の実態調査とともに酒造技術の指導を行ないました。

写真は大倉恒吉。

この調査に立ち会った月桂冠の11代目当主である大倉恒吉は、鹿又技官との交流により、酒造りへの科学技術導入の必要性を痛感したようです。

meiji01そこで翌1908年(明治41年)年には、鹿又技官の同級生で東京帝国大学出身の濱崎秀と言う人物をを初代技師として採用し、さらにその翌年の1910年(明治42年)に前述の大倉酒造研究所を創設することになりました。

写真は濱崎秀氏。

これまでは経験と勘による酒造りが主流でしたが、こうして科学技術の導入により、びん詰で防腐剤不使用の商品を開発するなどの成果をあげ、酒質は飛躍的に向上してゆきました。

樽詰の酒が全盛の時代であったことを考えると、これは画期的なことでした。

山廃酛と速醸酛の開発

meiji-taisho_p06その後、周辺技術が急速に進歩していったことにも伴い、火落ちは次第に減少してゆきました。

昭和44年(1969年)以降は、日本酒に防腐剤を入れなくても火落ちすることはなくなり、安定した酒造が行なえるようになりました。

その後も研究は続けられ、最近の研究では「生もと」と呼ばれる酵母の自然的純粋培養法の合理性が解明されて世界の研究者を驚かせました。

酒母の作り方を簡略化した「山廃もと」という技術や、乳酸を添加することによって短時間で酒母を増殖させる「速醸もと」という技術も開発されました。

写真は瓶詰めの様子。

四季醸造の成功

meiji-taisho_p05酒造業界の抱えていたもう一つの課題は、四季醸造を実現することでした。

四季醸造とは、季節を問わず一年を通して醸造を可能にするということですが、明治末期から大正初期にかけて、試験所や酒造業者によって多くの実験と研究が重ねられていましたが、どれも成功せず四季醸造は夢の技術とまで言われていました。

写真は大倉酒造研究所。

戦後には経済全般の急激な成長と構造の変化により、将来の杜氏不足が予想されるようになり、それを克服するためにも四季醸造を実現する必要がありました。

こうした状況の中で、月桂冠は昭和36年(1961年)に先端技術を駆使した四季醸造蔵を完成させ、新しい醸造システムを確立するとともに、さらに精密で正確な管理方法を開発し再現性を高めることに成功しました。

ついに四季醸造が実現したのです。

近年では杜氏不足が深刻になっており、2,000社ほどもある酒造メーカーはまさに転換期を迎えているわけですが、この新技術は古来より行なわれてきた寒造り体制を一変させる可能性を秘めており、業界の内外に大きな影響を与えることとなりました。

月桂冠の新技術「融米造り」に関してはこちら
⇒ 液化仕込みの利点~日本酒のうま味をコントロールできるのか?~

写真や資料などは月桂冠公式ホームページ(外部リンク)より引用させていただいています。

アメリカに酒造蔵を設立

d5f0fb2e01dbbee7a16662e954295ec8近年ではアメリカにおいて日本酒の酒造蔵を稼動させ、世界に日本酒を広める取り組みにも挑戦しています。

さらに、日本酒で初めて糖質ゼロの酒を商品化するなど、情熱をもって先進的な取り組みを行なっています。

四季醸造は月桂冠の社員により行なわれていますが、すでに50年以上の実績と酒造りのノウハウの積み重ねによっておいしいお酒を安定して作り続けています。

その一方で今もなお、杜氏を中心とした伝統的な醸造も一部で行ない続けています。

月桂冠のお酒は、全国新酒鑑評会やモンドセレクションなどで数多くの金賞を受賞しており、その高い品質には定評があります。

月桂冠大倉記念館

1dc85ea2伏見城の外堀の濠川沿いの柳並木のところに白い壁の土蔵の酒蔵があります。

酒造りの最盛期にこの近くを通ると、米を蒸したり、もろみが発酵する香りが漂い、独特の趣を感じることができます。

月桂冠大倉記念館では、貴重な酒造用具類を見たり、伏見の酒造りや日本酒の歴史を学んだりすることができます。

展示室の見学後には、きき酒処できき酒を楽しむこともできるようになっています。

一般見学では展示室の見学ときき酒を、オプション見学(予約が必要です)ではそれに加えて「酒香房」という隣接する酒蔵で、もろみ発酵の様子などの見学をすることができます。

開館時間

午前9:30~午後4:30(受付は午後4:15まで)
休館日 お盆(8月13日から8月16日まで)および年末年始

入館料

大人300円、中学・高校生100円
おみやげ付き 純米酒(180ml)1本 (未成年には月桂冠大倉記念館絵はがき)

見学予約

一般見学 個人は予約不要、 団体(15名以上)は前日までに予約必要(電話番号075-623-2056)
オプション見学 前日までに予約必要(電話番号075-623-2056)
※予約は見学日の3カ月前から受け付け

所在地・連絡先

〒612-8660 京都市伏見区南浜町247番地
TEL 075-623-2056
FAX 075-612-7571
月桂冠公式ホームページ ⇒ https://www.gekkeikan.co.jp/index.html(外部リンク)

アクセス

京阪本線中書島駅から徒歩5分、伏見桃山駅から徒歩10分
JR京都駅から近鉄京都線に乗換え、桃山御陵前駅から徒歩10分
JR京都駅からJR奈良線に乗り換え、桃山駅から徒歩18分
駐車場:バス4台(要予約)、乗用車22台

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おすすめのお酒

いちおしは「月桂冠 超特撰 鳳麟 純米大吟醸」です。

華やかな吟醸香、そしてなめらかな味わいが特徴の最高クラスの大吟醸酒です。

低温でおよそ1か月かけてゆっくり発酵させることにより、香りと風味をじっくり醸し出すことに成功した一本です。

銘柄: 月桂冠 超特撰 鳳麟 純米大吟醸
特定名称: 純米大吟醸酒
使用米: 山田錦、五百万石
精米歩合: 50パーセント
日本酒度:
酸度:
アルコール度数: 16度

香り  弱・・・・★強
コク  薄・・・★・濃
キレ  弱・・・★・強
味わい 甘口・・・★・辛口

おすすめの飲み方

大吟醸酒ですから、やはり冷やして飲むと最高です。

5~10℃程度の雪冷えに冷やして、あるいは10~15℃程度の花冷えに冷やしてお召し上がりください。

肴としてはお刺身がおすすめです。

このお酒ならではの華やかな香りと上品なキレが魚の持つ甘味や旨味ととてもよく合います。

その他のおすすめのお酒

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ヌーベル月桂冠
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特別本醸造酒の中から「ヌーベル月桂冠 特別本醸造」をおすすめします。

このヌーベル月桂冠という銘柄は、もともとは昭和39年に発売された特級クラスのお酒のものですが、当時の高級酒を新たな装いで甦らせたものです。

軽いキレ味と洗練された香りをお楽しみください。

月桂冠~日本酒に科学技術をいち早く取り入れた大倉恒吉と鹿又親技官~ まとめ

月桂冠のお酒はどれも安定して高品質なものです。

いち早く研究所を設立して科学技術を積極的に取り入れ、品質や安全性を高めることに努めてきた蔵元として当然のことかもしれませんが、高く評価したいものです。

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