世界に類を見ない複雑で精巧な方法により醸造と管理が行なわれているのが日本酒です。
その味や香りには豊富な多様性が見られますが、いろいろな角度から日本酒を見ていくと、さらに味わい深いものになります。
酒米
たいていの蔵元では、酒造りに適した性質を持つ酒造好適米、つまり酒米が使用されています。
有名な「山田錦」をはじめ、「五百万石」、「美山錦」など日本各地に80を超える様々な品種が存在します。
これらの酒米は、食卓で普通に食べられる一般的なお米よりも粒がやや大きく、その中心部には心白というでんぷん質からなる芯があるのが特徴です。
ただ、すべてのお酒に酒造好適米が用いられているわけではありません。
一般的なお米の中にも酒造りに適性を持つものがあり、蔵元によっては地元の個性を出すためにそれらの酒造適性米を使用することもあります。
酒米について詳しくは「日本酒が生まれるまで」の記事を参照してください。
杜氏
日本酒造りは、杜氏と呼ばれる熟練した職人の指導の下で醸造されています。
これらの杜氏は古来からの伝統的な手法と高度な技術を駆使して酒造りを行なっています。
研ぎ澄まされた勘、酒造りにかける情熱、そして経験の積み重ねが、杜氏に求められる資質です。
酒造一級、二級といった国家認定の技能士資格もありますが、それらは必ずしも杜氏の腕を示すものではありません。
近年では科学技術の進歩により酒造技術は飛躍的に向上し、それが杜氏の感性と相まって、芸術的ともいえる味わいの日本酒が多く生み出されています。
杜氏について詳しくは「日本三大杜氏」の記事を参照してください。
ラベルデータ
日本酒の裏ラベルにはたいていの場合3つのデータが記されていて、それを見るとそのお酒の味わいがある程度分かるようになっています。
1つめは「日本酒度」というもので、プラスの数字が大きいほど甘口傾向であることを表しています。
2つめが「酸度」で、酸の高さを表したものです。
平均値は1.3から1.5程度です。
日本酒度が同じお酒であっても酸度が高いほうがより辛口に感じられます。
3つめは「アミノ酸度」で1.2から1.5程度が平均値です。
この数値が高いと濃醇タイプ、低いと淡麗タイプということになり、お酒の旨味やコクの程度を知る目安にできる数値です。
新酒
日本酒は通常、秋に収穫される新米を仕込んで造られていきます。
ですから早い蔵元では師走前には新酒が登場します。
日本酒の場合、醸造年度の切り替えは6月ですので、7月1日から翌年6月30日までに搾られたお酒は、すべて新酒ということになります。
新酒もその出回る時期によって呼び方がいろいろあります。
9月から10月ごろのものは「ひやおろし」(生詰め酒)、12月から1月ごろのものは「搾りたて新酒」、3月から4月ごろのものは「 搾りたて生酒」といった具合です。
なお、醸造年度はラベルにBYとして表示されており、28BYなら平成28年度醸造のお酒ということになります。
日本酒は生き物
日本酒には特に賞味期限は設けられていませんが、天然の醸造の過程を利用したものですから、当然生きています。
特に生酒は変化しやすいので、冷蔵保存をし、開栓後はなるべく早く飲みきることが大切です。
一方で火入れをしているお酒は、3年や5年などの長期熟成に耐えるものもあります。
キャップの素材によっては、影響が出ることがあるため、瓶入りのお酒は立てて保管します。
まとめ
以上、5つの勘所を紹介しましたが、いろいろな角度から日本酒を捉えることができるということをお分かりいただけたと思います。
このようなポイントを押さえておくと、日本酒の楽しみはますます広がってゆくことでしょう。