杜氏になるために必要なこと~日本酒の製造免許と酒造技能士~酒の味と人をまとめる杜氏の仕事

日本酒造りにおいて、昔から大きな役割を果たしてきたのが杜氏です。

酒蔵で働く人たちには様々な役割があり、杜氏もそのうちのひとつです。

酒蔵においては、経営者つまりオーナーは蔵元と呼ばれ、経営判断はこの蔵元が行なっています。

現場としての酒蔵の最高製造責任者が杜氏で、酒造りの工程すべてにおいて責任を持っています。

もっとも、最近の小規模な酒蔵では、蔵元と杜氏が兼任であるところも増えてきています。

最高製造責任者である杜氏のもとには、頭、麹屋、酛屋という呼び名の役があります。

頭は副杜氏とも呼ばれ、杜氏の補佐役を担います。

麹屋は麹造りの指揮を担当し、酛屋は酒母造りの指揮を担当します。

彼らのもとで働く他の人たち全員は、蔵人と呼ばれています。

それぞれの役割を詳しく知りたい方は日本三大杜氏~杜氏と蔵人の役割と歴史を参照してください。

 

酒の味と人をまとめる杜氏の仕事

伝統的に酒蔵では上記のような蔵元、杜氏、蔵人というスタイルで酒造りが行なわれています。

そのようなわけで、原則として杜氏は1つの酒蔵に1人しか存在しません。

ただし、複数の蔵を有している蔵元の場合は杜氏が複数いることもあります。

ちなみに、平成25酒造年度において日本酒を醸造した酒蔵は1,236ほどでしたので、杜氏もそのくらいの人数しか存在していないということになります。

杜氏にはどんなことが要求されているのでしょうか。

まずは確たる酒造りの技術です。

伝統的な手法に加え、新種の酒米や酵母あるいは機械が次々と開発されてゆく現代の日本酒造りでは、こうした状況に柔軟に順応できるように、常に勉強と研鑽を怠らない姿勢が求められています。

それに加えて、酒蔵で働く大勢の蔵人たちをうまくまとめて円滑な酒造りを進めることも大切です。

よいお酒というのは、酒蔵全体の方向性や努力が一致して初めて生まれるものだからです。

酒蔵では日々いろいろな問題が発生します。

それはお酒の発酵やそのできに関係したことだけではなく、機械の故障出会ったり人間関係のトラブルであったり実に様々です。

こうした問題に冷静沈着に適切な対応ができなければなりません。

つまるところ、杜氏には技術力のみならず人間力も求められているのです。

 

どうすれば杜氏になれるのか?

では、杜氏になるにはどうすればよいのでしょうか。

基本的には、杜氏集団に属して酒造りの腕を磨いてゆく必要があります。

宮城県を例に挙げると、まずは「一般社団法人南部杜氏協会」の会員になります。

その後、実務経験を積むと同時に定期的に講習を受け研鑽を重ねていると、やがて「南部杜氏」資格試験を受けられるようになります。

この資格試験では、酒造りに関係した技術や技能、知識、さらには実務経験などが総合的に厳しく判定されます。

この試験に合格すれば、晴れて「南部杜氏」を名乗って酒造りをすることができるようになります。

日本三大杜氏の項でご紹介した他の杜氏集団においても、同様に独自の資格試験が実施されています。

 

日本酒の製造免許と酒造技能士 ~自ら杜氏を名乗る~

ただし、杜氏でなくても日本酒を造ることは可能です。

日本の法律においては、日本酒の製造免許を有していれば酒造りができるからです。

そしてこの製造免許は、お酒を造る人に与えられるものではなく、製造所である酒蔵に与えられるものです。

したがって、製造免許を持っている酒蔵では誰でも酒造りが可能です。

なお、酒造技能士という国家資格がありますが、これは酒造りに必須のものではなく、国によってその技能が確かであることを認められた証です。

さらに、杜氏に関する法律の定めは存在しないため、勝手に杜氏を名乗っても罰せられることはありません。

実際、杜氏集団の資格が無くても、働く酒蔵の経営者や師匠である杜氏に認められれば杜氏を名乗ることができます。

蔵元が杜氏を兼任する「蔵元杜氏」の場合においても、実績や経験、能力などへの高い評価があれば杜氏を名乗ることができます。

 

杜氏になるには まとめ

日本酒造りは楽な仕事ではありません。

しかしながら、日本の文化と伝統にかかわる産業であり、とてもやりがいのある仕事であるといえます。

杜氏になるのはそんなに簡単ではなく、むしろ難しいことですが、可能性はゼロではありません。

酒造りに情熱を傾けるのであれば、目指してみるのもよいでしょう。

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