日本酒のラベルには製造年月日を必ず記載しなければならないことが、酒類業組合法により定められています。
一方で、食品や飲料の場合は食品衛生法により、賞味期限または消費期限が必ず記載されています。
関係する法律が違うために、このような表記の違いが生じているのですが、消費者にとってはちょっとわかりにくいとする意見もあります。
小売店などで製造年月日を賞味期限と誤解して、賞味期限が切れた日本酒が売られていると指摘する消費者も出てきました。
そのようなわけで、製造年月日のみを表示することの弊害が指摘されるようになりました。
製造年月日とは
実際には、製造年月日を見ただけでは、昨日できたばかりの新酒なのか、製造から10年経った古酒なのかが判断できないこともあります。
なぜなら、日本酒においては、ラベルに記載される製造年月日は、できあがった日本酒を、瓶詰めして出荷できる状態にした日のことだからです。
右の写真では醸造年度が2011年、製造年月が2013年11月と記載されており、本当の意味を知らなければどう解釈していいのかわかりません。
なぜこのような状態になっているかというと、日本酒については昭和の初期頃から、できあがった段階ではなく出荷の段階で課税されるようになったためです。
つまり、税務所側から見たときに、いつ出来たかではなくいつ出荷するかのほうが重要なため、便宜上、瓶詰日の印字を法律で義務付けたというわけです。
最近では、瓶詰めの工程にも変化が生じてきました。
これまでは醪を搾って上槽した後、数日から数ヶ月あるいはそれ以上の期間タンクで貯蔵してから瓶詰めされるのが普通のやり方でした。
しかしながら、タンクでの貯蔵にはどうしても酸化のリスクがつきまといます。
そこで、上槽後すぐに瓶詰めをしてしまうやり方(瓶囲いと言われるもの)を取り入れるところが増えてきました。
この傾向は無濾過、生酒系を主力とする蔵元に強いようです。
そうしますと、現在の法令では瓶詰め日を製造年月日として印字しなければならないため、店頭に並ぶときには製造年月日から数ヶ月以上経っていることになります。
この表示を目にした消費者は「この日本酒は古い」と誤解してしまうということです。
それで、最近では製造年月日のほかに酒造年度を記載しているところも増えています。
酒造年度 (BY)
製造年月日が瓶詰めした年月を表すのに対して、酒造年度(BY)または醸造年度は醸造した年を表します。
つまり酒造年度は作られた年を表し、製造年月日は出荷日を表すわけです。
右の写真の場合、21年に作られた酒が27年2月に瓶詰めされ出荷されたことがわかります。
酒造年度について詳しくは「酒造年度(BY)とは」の項を参照してください。
まとめ
今後の課題としては、上槽日、瓶詰め日、出荷日などを明確に区別することだと思われます。
日本酒のラベルには必ず記載される製造年月日ですが、「本当の」製造年月日とはやや異なるということがおわかりいただけたでしょうか。