関東では根強い人気を持つ菊正宗。
この酒を製造しているのが菊正宗酒造株式会社です。
樽酒では最大のシェアがあるほか、辛口の味わいは料理と一緒に飲む食中酒として定評があります。
近年では、化粧水など酒の効能を利用した美容品を販売するなど本物への強いこだわりがみえます。
菊正宗酒造株式会社
菊正宗の歴史は非常に古く、その創業は万治2年(1659年)で、嘉納家が神戸の御影で酒造りを始めたのが起源です。
御影はいわゆる灘五郷のひとつであり、まさに名門といえます。
後醍醐天皇に、澤乃井から汲んだ水で酒を造り献上した際に嘉納の名を賜ったとされています。
菊正宗はこの創業御影の名門、嘉納家の本家にあたるため「本嘉納」と呼ばれています。
また、同じ御影郷にある日本最大手の酒造メーカーである白鶴酒造の嘉納家もこの一門から輩出されており、こちらは本嘉納と区別して「白嘉納」と呼ばれています。
ちなみに日本ボクシングの名門、神戸ジムの創始者の嘉納健治を輩出したのもこの一門です。
菊正宗の由来
菊正宗という酒銘は、もともとは「正宗」で、江戸時代ではこの酒銘で流通していました。
この名の由来にはいろいろな説がありますが、正宗を音読するとセイシュウとなり、清酒に通ずるところから採用されたとも言われています。
この正宗という銘柄が江戸で大流行したことから、正宗と名乗る酒がどんどん増えていったようです。
そのため明治時代に入ってから、正宗を正式に商標登録しようとしたところ、多くの蔵元が同じ正宗という銘で商標登録を出願し、結局のところ受理されませんでした。
そこで、ふと思いついたアイデアとして頭に菊を付け「菊正宗」として世に出ることになったのです。
「キクマサ」の愛称でも知られています。
生酛造りへのこだわり
1877年には清酒をイギリスに輸出するようになっていましたが、嘉納家中興の祖と言われる8代目嘉納治郎右衛門を筆頭として積極的な技術革新や海外進出が行なわれ、現在の基礎が作られました。
ちょうどこの時期に「菊正宗」を登録商標しています。
1927年には灘中学校の設立に関わり、1947年には昭和天皇が菊正宗本社に行幸しました。
1971年には保有していた灘の酒造用具505点が国の重要有形民俗文化財に指定されます。
1981年には業界に先駆けて、いわゆる三増酒の生産をすべて打ち切り、1988年の時点で主力酒は全て本醸造酒になっていました。
1995年にはあの阪神淡路大震災で被災し、酒造記念館などが被害を受けましたが、1999年には酒造記念館を再び建てます。
2009年には創業350周年を迎え、「真・辛口宣言」を発表し、本醸造酒と純米酒をすべて生酛造りにすることを決定します。
これにより全製品のおよそ4割が生酛造りとなりました。
この時には、主力製品のひとつであった「菊正宗 上撰 本醸造」も生酛造りに踏み切っています。
さらに2012年には吟醸酒と純米吟醸酒も同様に、すべて生酛造りにすることを決定。
これで上撰以上のラインナップがすべて生酛造りになりました。
このように、菊正宗は業界大手として酒造業界をまさにリードする存在となってきました。
伝統の酒造技術である生酛造りを継承することで手間はかかるものの、旨い辛口酒を目指した酒造りを今なお追及しています。
酒米は山田錦などを中心に契約農家が栽培したものを使い、水は灘五郷の酒造りには欠かせない宮水を使うことによって銘酒を造り続けているのです。
菊正宗のCM
菊正宗はコマーシャルでもよく知られた存在です。
「旨いものを見るとキクマサが飲みたくなる。辛口のキクマサを飲むと旨いものが食べたくなる」というフレーズは有名です。
「やっぱり俺は菊正宗」(作詞:永六輔 作曲:中村八大 唄:西田佐知子。正式なタイトルは「初めての街で」)というコマーシャルソングでも知られています。
最近のコマーシャルでは、この歌をジェロがカバーしたものが使用されています。
菊正宗酒造記念館
もともとの酒造記念館は、神戸にある御影の本嘉納家本宅屋敷内に万治2年(1659年)に建てられた酒蔵を、昭和35年に現在の地に移築し酒造記念館として一般開放していたものでした。
館内には、国指定の重要有形民俗文化財である灘の酒造用具や所蔵する小道具類が多数展示され、酒造りの歴史を学べる資料館として年間およそ5万人が来館していました。
しかしながら前述のとおり、平成7年1月17日に起こった阪神淡路大震災によって倒壊してしまいます。
それから4年後の平成11年1月25日に、現在の菊正宗酒造記念館がオープンしました。
震災による被害は大きかったものの、収蔵の酒造用具や小道具類を瓦礫の下からひとつひとつ丁寧に手作業で拾い出した結果、ほとんどが無事かまたは修復可能な状態でした。
この新しい記念館は、屋根は本瓦葺を、外壁や辻塀は焼杉板張りを採用し、伝統的な酒蔵の風情が漂っています。
館内には、旧酒造記念館の柱や梁として使われていた樹齢400年以上といわれる柱や梁が随所に用いられています。
菊正宗酒造記念館の展示テーマは、酒造りの原点を知ることです。
酒造りの過程から使用される道具の知識や実物による資料に加え、灘の酒を醸す技術や水、お米や風土についても紹介されています。
350年に及ぶ酒造りの伝統やそれに対する熱い思いが感じられる空間となっています。
さらには、日本酒の新しい楽しみ方や文化についての提案も展開されています。
菊正宗酒造記念館
〒658-0026 神戸市東灘区魚崎西町1-9-1
TEL. 078-854-1029 FAX. 078-854-1028
開館時間:午前9時30分~午後4時30分(団体 要予約)
休館日:年末年始
入館無料
交通アクセス
JR:「住吉駅」より六甲ライナーに乗換、「南魚崎駅」下車。エレベーター1階より北西へ徒歩2分
阪神電鉄:「魚崎駅」下車、住吉川沿いの遊歩道「清流の道」を南へ徒歩10分
乗車時間(乗換時間を除く)
大阪方面より:〔JR〕大阪駅~住吉駅 約30分、〔阪神〕梅田駅~魚崎駅 約35分
神戸方面より:〔JR〕三ノ宮駅~住吉駅 約8分、〔阪神〕三宮駅~魚崎駅 約10分
菊正宗酒造株式会社
兵庫県神戸市東灘区御影本町1-7-15
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おすすめのお酒
いちおしは、やはり菊正宗の定番「菊正宗 上撰 本醸造」でしょう。
すっきりしたバランスの良い味わいとキレのある力強いのどごしを楽しめます。
生酛造りによる本格的な辛口の本醸造酒で、料理の味を引き立てるお酒として食事と一緒にいただくのに最適です。
日本酒データ
銘柄: 菊正宗 上撰 本醸造
特定名称: 本醸造酒
使用米: 国産米100パーセント
精米歩合: 70パーセント
日本酒度: +5.0
酸度: 1.5
アルコール度数: 15度
香り 弱・★・・・強
コク 薄・★・・・濃
キレ 弱・・・・★強
味わい 甘口・・・・★辛口
おすすめの飲み方
非常にバランスが良いため、冷酒でも燗酒でも良く、肴に合わせて幅広い温度帯で美味しくいただくことができます。
刺身や鍋物など和食とは特に相性が良く、素材の味が引き立ちます。
その他のおすすめのお酒
シェアトップの樽酒から「菊正宗 上撰 樽酒」をおすすめします。
こちらは吉野杉の樽に詰めたものを、最も香りのいい時期に瓶詰めしたお酒です。
杉の香りとキレのある飲み口が何とも言えない本醸造酒です。
さらに蔵元最高級のお酒として「菊正宗 超特撰 純米大吟醸」があります。
酒米として山田錦を100%使用し、丹波杜氏秘伝の技でじっくり醸造した洗練された味わいの純米大吟醸酒です。
ぜひ菊正宗の神髄を味わってみてください。
菊正宗 本物にこだわり、生酛造り、うまい辛口酒を追求したキクマサの酒造り まとめ
菊正宗酒造株式会社は、創業350年を誇る名門です。
その品質にも妥協がなく、特に辛口でありながらも旨みのあるお酒として定評があります。
江戸時代から「下り酒」として人気を博した灘のお酒を今もなお楽しめるのです。