日本には現在1,200を超える種類の伝統工芸品があるといわれています。
これらの工芸が伝統工芸品と呼ばれるのにはそれなりの理由があります。
伝統工芸品は日常生活で使用される物品ですが、長い歴史と伝統によって受け継がれてきたものです。
そして、熟練した職人が匠の技を用いてほぼ手作りで作り上げるのです。
こうした特徴から、伝統工芸品を製作するための技術を習得するためには必然的に長い年月が必要とされています。
最近では人々の生活スタイルも変化し、昔ほど伝統工芸品の需要がないのも事実です。
そのため、伝統工芸の後継者の確保や育成がたいへん難しくなっているのが現状です。
しかしながら、伝統的工芸品は日本独自の伝統的技術や技法を伝承しながら、多くの人々に豊かさと潤いを与えてきました。
このまま消えてゆくのを見るのは忍びないものです。
伝統工芸士
こうした問題が浮かび上がってきたことを受けて、1974年に「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」が定められ、その中で「伝統工芸士」が規定されました。
当初は通商産業大臣認定資格でしたが、その後は経済産業大臣認定資格となり、現在では「伝統工芸士認定事業実施要領」に基づき(財)伝統的工芸品産業振興協会が認定事業を行なっています。
伝統工芸士になるには、(財)伝統的工芸品産業振興協会による「伝統工芸士認定試験」に合格する必要があります。
受験資格は、該当する伝統的工芸品の製造に現在も直接携わっており、なおかつ12年以上の実務経験年数があることです。
この実務経験年数には、専門養成機関で費やした修得期間も含まれています。
法律上、伝統工芸士は伝統工芸の保存、技術・技法の研鑽に努力し、その技を後代に伝える責務を負っています。
それで、認定を受けた伝統工芸士は産地伝統工芸士会を結成し、それに入会するとともに、伝統工芸士の交流と活動を通じて産地の振興に努めなければならないことになっています。
日本各地の産地伝統工芸士会は、日本伝統工芸士会に加入します。これも義務付けられています。
これらの伝統工芸士会により親睦と情報交換が行なわれ、伝統的技術の技法の継承や技術の向上を図っているのです。
このように、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」によって伝統工芸士というものは規定されているのですが、中にはこうしたことを知らずに伝統工芸士を名乗っている方もいるかもしれません。
また、日本伝統工芸士会には所属していないものの、県など特定の地域で指定された伝統工芸士もいます。
ですから基本的には、産地伝統工芸士会や日本伝統工芸士会に所属している伝統工芸士については、その作品の品質を信頼してよいでしょう。
なお、経済産業大臣により指定を受けた伝統的工芸品で、伝統的技術や技法、原材料および製造地域についての検査に合格したものは、個々の商品に「経済産業大臣指定伝統的工芸品」という表示を付けることができます。
この表示がされているものは、まちがいなく伝統的工芸品といえます。